吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

第174通常国会/予算委員会議事録( 2010年3月9日 )

2010年3月9日

5. 就職協定と新卒一括採用-1/2

○吉川沙織君

取組自体は本当に大事なことだと思いますし、私自身が
学校を卒業するときの3月時点ではこのような取組、
残念ながらなされておりませんでしたので、是非積極的に
お取り組みいただければと思います。

そしてまた、今、山井政務官から御答弁いただきました
とおり、内定を得ることができた学生は4月から新しい
スタートを切ることができるわけですが、そうでない
学生生徒さんにとってはそうではないわけです。
そのためにわざわざ留年するケースもあるぐらいです。

ですから、ここからは、日本の採用、雇用慣行に
ついて、就職協定と新卒一括採用の在り方の観点から
お伺いをさせていただきたいと思います。

まず文部科学大臣にお伺いいたします。
私は、先ほどから申し上げておりますとおり、今から
12年前の平成10年に就職活動をいたしました。実は
その前年に就職協定が廃止をされ、その廃止直後、
つまり私の1年上の先輩は協定が廃止直後のときに
右往左往しながら就職活動をされたわけです。

その翌年に私自身は就職活動をして、もう先輩の
時点で早期化の傾向があって、1年違うだけでも
更にその早期化の傾向は顕著になりました。

現在は、早かったら3年次に入った途端就職セミナー
等があって実質的な就職活動に入るなどしており、
学生が学生の本分たる学業に専念できないような
実態がございます。

就職協定に代わって倫理憲章というものがあるのは
十分に承知いたしておりますが、拘束力を持ってない
んじゃないかと思います。

昨年の委員会においては当時の文科大臣が就職
協定復活について前向きな答弁をなさっていますが、
川端文部科学大臣の御見解をお伺いします。

○国務大臣(川端達夫君)

お答えいたします。
御指摘のとおり、昭和28年から平成8年までは就職協定
というのがございました。解禁日は8月1日前後、選考、採用
の内定日は10月1日ということでありましたけれども、企業側
から、就職協定との実態の乖離、通年採用やインターネットの
利用など雇用状況が変化した、規制緩和などの理由に協定を
見直したいという申入れがありました。

大学側と企業が3回にわたり協議を行った結果、最終的に、
平成9年度は協定を締結せずに、御指摘にありましたように、
大学側は申合せ、企業側は倫理憲章を定めるということで
今日に至っております。

申合せというのは、学校推薦は7月1日以降しかやらない、
正式内定日は10月1日以降、倫理憲章、企業側、日本経団連で
ございますが、は、正式内定日は10月1日以降というのが一応
決められておりまして、その精神は、おっしゃいましたように、秩序
ある就職活動を担保することと学生はしっかりと学業に専念できる
ようにということでありますが、実際は、今、多分大学の3年の春から、
資料請求に始まり、秋口から3年いっぱいぐらいまで、今ごろまでは、
この倫理憲章や申合せに全く想定をされていない企業説明会への
出席という形が行われて、その春から人事面接、そして内々定という
概念で運営をされているのが実態でありまして、

実際には相当早い時期から、こういう倫理憲章や申合せの対象外で
あった企業説明会という、広報活動と称しているんですが、への出席
ということで学生が相当早い時期から授業に出られないということで、
結果的には学業に専念できないから、企業が受け取る学生の
質もそれだけ分ディスターブされているという部分では学業に
影響を与えているのではないかということ。

あるいは一部には、この企業倫理は関係ないと、倫理憲章は
関係ない、我々はそんなの従うつもりもないというふうな企業が
あります。そして、いわゆる申し上げました内々定ということ、
内々定なんだと、内定は10月1日だけれども内々定をしている
だけなんだと。

こういう理屈で、実際上は非常に実態が乖離してしまっていて
弊害が出ているということで、前大臣の塩谷大臣は3回にわたって
企業側に対してもう一度これを何とかしようということの申入れを
いただき、協議もしていただいたんですが、昨年の10月から、
申合せにない、いわゆる企業の広報活動をできるだけ土曜日、
日曜日、休日というのにやってほしいというお願いや、

リクルート会社が主催する場合は土日、休日に集中させるという
ことと同時に、倫理憲章、企業の広報活動、いわゆる説明会なん
ですが、これはその後の選考には影響しないんですよという旨の
記載はあるんですが、実態はそういう乖離していることになって
いますので、塩谷大臣のときに3回ほど協議をしてもらったんですが、

これまでの協議を通じても両者の見解には隔たりが多くて、就職協定を
もう一度結び直してということになることが近い時期に復活させることは
なかなか難しいのが正直申し上げて現状でありまして、粘り強く、大学の
本分である学生が勉強をするということと、それから、しっかり勉強をして
社会に役立つ人材になるということが、社会に役立つ就職をすることの
作業によって支障を受けているということは本末転倒になっているということ。

何とかこの部分を工夫をすることはいろんな角度で検討を
しているところでありますが、またいろんなお知恵も御示唆を
いただければ有り難いと思っています。

○吉川沙織君

今、川端大臣から御答弁いただきましたけれども、一昨年末
にはリーマン・ブラザーズが破綻をした後、内定取消しが
横行して、参議院から雇用法案、提出をさせていただきました。

内々定、内定を持ち続けることによって、急に企業の業績が
悪化したことによる内定取消し、そういう事態が横行すると、
学生としても2社以上内定を保有し続けて春前に内定辞退
なんていうことも考えられますし、最終的には企業にしっぺ返しが
来ることも想定されます。

やっぱり企業の採用活動は4年次の学生を対象とすべきであり、
学生や若者がその年齢にふさわしい時間の過ごし方を得るように
するためにも、是非議論だけでも始めていただきたいんですが、
川端大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(川端達夫君)

就職協定の問題と同時に、新卒者が就職するという、私は
いろんな議論を、前のもフォローし、また経営側と議論したときに、
採用側としては通年で採用するんだと、人材がそういうものだと
いうふうなことの論理がある一方で、実際は新卒者と卒業して
しまっているいわゆる就職浪人した部分では非常にハンディが
付いてしまうという実態が生じているという部分では、割にある
意味で企業の背に腹は代えられないという部分はそれなりに
経済環境では分かるんですが、やはり人を自分の人材として
活用するということへの基本的な理念というものをもう一度
しっかり持っていただきたいなというのが正直なところであります。

制度とかの部分ではいろんな工夫はあるんですが、実態として
そういうことというのは、やはり私は、その人材が自分の企業に
とって必要であるかどうかをしっかり判断して採用できるというのは
企業の存亡にかかわっていることでありますから、新卒だからとか
早く手を打ったからとかいうことでないことが長い目で見れば企業の
存続を問われている一番大事な部分であることは企業も実は
分かっていると思うんですね。

そういう部分で、いろんな観点からの角度で、本当に働く人が
一生懸命頑張れる環境をつくる、そしてそのために勉強することが
一番いいんだということをつくるのは極めて大事だと思って
おりますので、また頑張ってまいりたいというふうに思っております。

○吉川沙織君

実は、昨日、3月8日付けの東京新聞の一面に、伊藤忠商事
会長の丹羽宇一郎氏が「就活問題」と題したコラムを寄稿されて
います。

経済が低迷している日本の生命線は最大の資産である
教育と技術をどう活用するかだ。しかし、3年生から就職
活動を始めてしまうと、専門科目の勉強ができるのは実質的に
ゼロになってしまう。経済界が就活解禁を4年生の夏休み以降
で厳守することから始めてみてはどうかという、

そういう提言をなさっておりますし、倫理憲章はございます
けれども、最新の情報で924企業、団体しか加盟しており
ませんし、何より外資系企業はそれに参画をしておりません。

ですから、丹羽氏がこういう提言をなさっていることもありますし、
昨年の文科大臣の答弁もありますので、是非、川端大臣、そして
就職協定、かつては携わっていたのが労働省でございますので、
連携をして、是非企業側にも、そして大学側にも働きかけを強めて
いっていただければと思います。