吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

総務委員会(2024年4月16日)

2024年4月26日

※会議録は確定稿になり次第、アップいたします。

総務委員会で40分の質疑に立ちました。

議題は、日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案(NTT法改正案)でした。私にとっては、かつて勤務した会社の法案そのものであり、初当選から13年目に入るまでは質疑に立つことはしていませんでしたが、2018年の電気通信事業法改正案を皮切りに質疑に立たせていただいています。

政治的に議論になってしまった側面が否定できないNTT法ですが、今回の改正事項自体はそこまで議論になる項目は入っておらず、ただ、本則ではなく附則に議論を呼ぶ内容と書きぶりがありましたので、質疑の最初は2019年の電気通信事業法改正時にも取り上げた、法案制定に至るまでのプロセスについて取り上げざるを得ませんでした。

2019年の電気通信事業法の改正は、携帯の通信料金と端末代金を分けて売ることを事業者に義務付ける改正を含む法案でしたが、これは改正前年8月の官房長官の発言をきっかけに、慌ただしく有識者会議が設置され、そこで数回の議論を経て翌年3月には改正案が国会に提出されるという通常とは少し異なるスケジュールで法案が提出されたものです。

今回も議論の発端は、昨年設置された自民党の特命委とこれに紐づくPTですから、PTのスケジュールと後追いする形となった情報通信審議会の通信政策特別委員会のスケジュールを比較することによって、今回の制定プロセスを浮き彫りにしました。

また、本則と附則の違いを確認し、附則第4条の規定「検討を加え、その結果に基づいて、令和7年に開会される国会の常会を目途として、~法律案を国会に提出する」(NTT法を改正か廃止か電気通信事業法を改正するかどっちとも読める文章ですが、いずれにしても内容が決まっていないものの来年の常会に法律は提出するということを書いてあります)について、今回の改正案以外で法律案の国会提出に言及した例の答弁を求めることで、今回の附則の規定ぶりについても滅多にない例であることを浮き彫りにしました。

ただ、NTT法制定から40年が経過し、固定電話がほぼすべてだった時代から大きく変遷していることは事実ですから、然るべき場所で静かに議論が始まっていれば、落ち着いた環境で中長期的に先を見据えた議論になったのではないかと思うと今次改正の議論の発端が、自民党の党内で情報通信分野ではなかったことが何ともいえない気持ちになってしまいます。

法制定のプロセスを確認した後は、淡々と法律の立て付けや現状について確認し、さらには2年前の電気通信事業法の改正事項も踏まえ、今後のユニバーサルサービスの在り方等について総務省の見解を質しました。

◎事業法の定義
⇒一般的には特定の業種の営業の自由について、公共の福祉のために規律する法律
◎主要な事業法
⇒電気通信事業法、電気事業法、ガス事業法、たばこ事業法、鉄道事業法など
◎主要な事業法に付随して特定の会社名が入る法律
⇒日本電信電話株式会社等に関する法律、日本たばこ産業株式会社法、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律

◎NTT法制定当時の電気通信事業、サービス
⇒固定電話、公衆電話
◎直近の事業法改正時の電気通信事業、サービス
⇒ブロードバンドサービス、メール、ウェビナー、メタバース、AI、多種多様な形態
◎NTT法制定時(昭和59年)の「当面1,200ビット換算500回線」速度の意味
⇒現在光ファイバーにより一般向けに提供されているような毎秒1ギガビットのブロードバンドサービスと比較すれば約80万分の1、例えば1メガバイトの写真を送る場合には約2時間かかる

◎固定電話の全盛期と直近の状況
⇒ピーク:1998年3月末時点の約6,300、直近:2023年12月末時点の約1,400万
◎メタル設備の維持限界
⇒2035年頃

◎固定電話のユニバーサルサービス交付金の状況(2023年度認可)
⇒NTT東 40.2億円、NTT西 27.0億円 計67.2億円
◎固定電話の赤字額
⇒NTT東 約225億円、NTT西 約325億円 計約549億円の赤字

◎ブロードバンドサービスユニバ交付金の検討状況
⇒2022年改正を踏まえ、現在検討中

◎研究開発の状況(国内2022年度決算ベース、国外2021年度実績)
⇒NTT:2,528億円、KDDI:264億円、ソフトバンク:561億円、楽天グループ:142億円、
メタ:2兆7,864億円、マイクロソフト:2兆7,702億円

国際競争力強化のためには、すべての事業者が国益のために研究開発力を高めていかなければならない状況であるのではないかと考えます。

また、ユニバーサルサービスについては、電気通信事業法第7条に規定はありますが、固定電話のメタル設備は維持限界を迎えることが明らかとなっていることもあり、ブロードバンドサービスがこれに加えられた2年前の事業法改正を基本とした制度設計が行わなければなりません。

よって、国民生活に直結する「ユニバーサルサービスの在り方」と「国際競争力の強化」、そして「公正な競争」についての議論が十分になされることが必要であると考えます。

〔質疑項目(日本電信電話株式会社等に関する法律の一部改正案)〕

1.法案提出のスケジュール

2.附則第4条の検討規程

・NTT法の制定後の改正において、見直し規定を初めて置いた改正と規定ぶり
・今回の改正案以外で法律案の国会提出に言及した例
・本則と附則の違い

3.事業法と会社(社名)法の関係性

・事業法の定義と主要な事業法
・主要な事業法に付随して特定の会社名が入る法律の例

4.電気通信事業法とNTT法の歴史

・NTT法と電気通信事業法の制定年
・制定当時において対象とされた電気通信事業・サービス
・直近の電気通信事業法改正で対象とされた電気通信事業・サービス
・法制定当時(昭和59)年の附帯決議にあった「当面1,200ビット換算500回線」速度の意味

5.固定電話の状況

・法制定当時以降、固定電話のピーク時と現在の回線数
・電話交換機設備が維持限界を迎えることを契機として、IP網へ移行(いわゆるマイグレーション)によって、2025年に電話中継網の効率を図るが、その一方でアクセス回線であるメタル回線は当面維持されることとなるが、それでも限界はくる。メタルが維持限界を迎える年数
・メタルにかかる設備の維持費
・メタル(加入電話)に対する直近のユニバーサルサービス交付金の額
・メタル(加入電話)に対するNTT東西の直近の赤字額

6.ユニバーサルサービスの規定

・電気通信分野におけるユニバーサルサービスの規定
・ブロードバンドサービスにかかるユニバーサルサービス交付金制度の検討状況(現在検討中)

7,国際競争力強化のための研究開発推進の在り方