第171通常国会/決算委員会議事録(2009年6月22日)
党首討論を受けての官房長官発言の意図と認識
○吉川沙織君
民主党の吉川沙織です。
今日は、厚生労働省の省庁別審査でも取り上げました
若年者雇用対策の側面からまた質問をさせていただきたいと
思っております。
4月20日の決算委員会では、若年者雇用対策について
主に厚生労働大臣と議論をさせていただきましたが、
若年者雇用対策事業は、厚生労働省のほかに経済産業省や
文部科学省、内閣府でも行われております。
今日は、一つ目として若年者雇用対策に係る関係省庁間の調整、
連携の必要性、二つ目として省庁内における事業重複整理の必要性
という観点から質問をしていきたいと思います。
4月20日の決算審査の際にも申し上げましたが、私自身
就職活動をいたしましたのは今から11年前の超就職氷河期で、
今またその再来と言われております。今から10年前に会社員として
社会人のスタートに立たせていただきましたが、しかしながら一方で、
どれだけ働きたいと思ってもどんなに働きたいと願っても、
多くの同世代が正社員になれず非正規という働き方で社会に
出ざるを得なかった世代の一人でもあります。
正社員になった同世代は、超長時間労働で心身が疲れ果て、
一方で、どんなに働きたいと願いながらも当時の経済状況から
正社員として社会に出ることができなかった同世代の中には、
自らを責め、将来に希望を持てないまま30歳前後を迎えている
状況にあります。
そのような中、我が国の20代、30代の死因の1位は
自殺となっています。それもほかの死因の割合を大きく
引き離しての1位であり、ほかの先進国にはない現実であります。
若い世代が明日に夢や希望を持てなくなっている
国の側面の一つであると思います。
前回はこのことを申し上げてから質疑に入らせていただきましたが、
今日はこのことに関してどうしても確認をさせていただきたいことが
あるため、この点から質問をさせていただきます。
6月17日に行われました党首討論を受けて、官房長官は
記者会見で次のような発言をなさったと一部報道で報じられています。
河村官房長官は17日の記者会見で、民主党の鳩山代表が
党首討論で医療事故や若者の自殺問題を取り上げたことについて、
「お涙ちょうだい」の議論をやるゆとりはないのではないか、
財源の問題や外交・安全保障などテーマは多々あると述べた。
長官は、人の命は重要なテーマだと考えているが、情緒的な話を
している段階ではないとも語った。
官房長官記者発表には、ウエブサイトには掲載されていないため、
この報道が誤報であることを信じたいのですが、この発言が事実か否か、
まず確認をさせてください。
○国務大臣(河村建夫君)
お答えいたします。
新聞報道に出たとおり、お涙ちょうだい式のということを
申し上げたことは事実であります。ただ、情緒的な、今そういう
段階でないということを申し上げました。
それは、確かに鳩山代表が命の大切さをお訴えになった、
医療については、医師の数をうんと増やす、あるいは
診療報酬のアップを主張されたんです。そのことについて
総理が財源いかにしますかという話、これに対して、命より
財源が大事なのかと、こうおっしゃった。総理への質問に対しては
そのような切り返しがあったということ、これは全くその回答に
なっていないなという私がまず印象を受けたこと。
それから、命の大切さ、このことはもとより異論がないところで
ありまして、医療について言えば、政府・与党としてもこの問題は
大事だということで、地域医療の再生を図る、あるいは緊急
医療対策であるとか、また医師不足対策、あるいは女性特有の
がん対策、あるいは未承認薬の開発支援、あるいは
新型インフルエンザ対策等々数多くの施策、特に自殺対策も
ございましたが、これもNPOで頑張っておられる方々に対する
100億円の基金等の対策をやっておるわけです。
しかしながら、財源については、現在の医療は将来世代に
膨大な負担も先送りしながらでもやらなきゃいけない、こういう
現実がある。更なる医療の充実を図るということであれば、
具体的な財源というものも当然正面から取り組んでいかなきゃならぬ。
そういう意味で、それをただ情緒的な議論ではなくて、かえって
将来世代の負担を増幅するものになるのではないかということも含めて、
これをそのままやるということは無責任になりますから、
そういう意味で私は申し上げた次第でございます。
○吉川沙織君
お涙ちょうだいと官房長官が切って捨てたということを
私は本当にショックでありますし、愕然としました。
誤報であることを信じていました。しかも、官房長官は
閣僚で構成される自殺総合対策会議の会長でもあられますし、
自殺対策推進に関する政府の責任者でもいらっしゃいます。
そのような立場にあられる方がこのような発言をされることは
信じ難いことです。若い世代が自ら死を選ばざるを得ない状況は、
そしてまた、生命力あふれる若者が自殺をするという状況は究極の
絶望から来ていることに違いありません。
どの時代のどの国よりも恵まれているであろうこの現代の日本に
生まれながら、絶望して自らの命を絶つ人がこんなにも多いのは、
やはり社会の責任でありますし、今までの政治の責任でもあります。
ここに東京マラソンのときの新聞があります。これ3万5,000人ですが、
ちょうどここにあります。2008年、自殺で亡くなった方は、自ら命を
絶たれた方は3万2,249名。これ、3万5,000人全員写っていなくて
これだけの人の数です。その重さ、確かに、財源の問題や
外交・安全保障などが重要な課題であるということは私自身も
十分理解をいたしております。
しかしながら、国民の安心と安全を守る、つまり命を守るのが
政治家の役目だということも強く感じています。
そこで、改めて官房長官にお伺いいたします。
政府の要職にある官房長官のあの発言、本当に悲しいことですが、
あのお涙ちょうだいというのはもしかしたら本音だったのかもしれません。
しかしながら、この発言をされたことによって、若者を始め
悩んでいる人を絶望に陥れ、もしかしたら引き金を引いてしまったかも
しれないなど、影響は大きかったと考えます。
今後このような発言をなさることは二度とないと思いますが、
命に対するメッセージ、あればお伺いしたいと思います。
○国務大臣(河村建夫君)
かつて、人の命は地球より重いとおっしゃった総理もおられました。
やっぱり今もってそれは、命の大事であることは多言を要しません。
私も同じような思いでカネミ油症の問題であるとか、今、原子爆弾で
苦しんでおられる方々の一括解決といいますか全面解決に向けて
今努力をいたしておるわけでございまして、私の言葉がいささか
独り歩きした思いもございますが、しかし、口から出たことでありますから、
逃げるつもりはありません。
ただ、あのときのやり取りでマスコミの方からも、そういうことを
言うと、政府は切るべきところは切っていかなきゃいけないというふう
に聞こえるが、どういうことなんですかという実はやり取りがございまして、
私としては、もちろん私が言いたかったのはそういうことじゃなくて、
今もう非常に切迫、詰まっている話なんだから、そういう情緒的な
話をしている段階ではないという、私も深刻な思いをしているんだと
いうことを言いたかったんだというふうに申し上げました。
誤解をされるような発言であったということは私も残念に思いますが、
まさに人の命の大切さについてはもうまさに真正面から取り組んで
いかなきゃいけない課題であることは、私もそういう思いでございます。
○吉川沙織君
情緒的な話としてお涙ちょうだいと切って捨てられたことは
本当に多くの方に失望と絶望を与えたと思いますし、官房長官の
御発言、本当に重いものがあると思いますので、是非、今後は
そのようなことのないようにお願いをします。
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