吉川さおり 参議院議員(全国比例)

事務所だより

議院運営委員会(2022年9月8日)

2022年9月21日

議院運営委員会で質疑に立ちました。

故安倍晋三元総理の国葬儀について、議運筆頭理事として30分間の質疑に立ちました。議院運営委員会の所管である「議院の運営に関する事項」ではない議題でしたが、今回は致し方なく議運委員会の場での質疑を了とせざるを得ませんでした。

議院運営委員会に長く籍を置かせていただいている立場として、またどの議員より会議録を重視している立場として、国葬儀を執り行うことが既定路線である以上、会議録に何を留めておくべきか、将来の国会に何を残しておくべきかを考えながら質疑の組み立てを行いました。

委員会の日時や質疑時間を含め、何もかもが直前まで二転三転し、その調整に奔走せねばならず、過去の資料や記録に落ち着いて目を通すということは夜しかできませんでしたし、内閣からの資料には、質疑の前々日に出てきたものもあり、最後まで組み立てに頭を悩ませたのは事実です。

今回の質疑にあたり、改めて故安倍元総理に深く哀悼の意を表するとともに、民主主義の根幹をなす国政選挙期間中にあってはならない事件が起こってしまったこと、民主主義の在り方、そしてその事件の背景にあるとされる様々な問題など数多くのことを考えました。

質問自体はどこに焦点を絞るか悩みました。そもそも質疑の持ち時間ひとつとっても、緊急事態宣言のときのような10分程度なのかそれ以上になるのかも含め、一切予想がつかなかったということもありますが、元総理の逝去にもかかわる重大な問題でもあり、どのような取り上げ方をしても難しい側面があったためです。

まず、事実から辿るほかありません。

7月14日、8月10日、8月31日に行われた総理会見議事録。8月の短い臨時会で各議員が提出した国葬儀に関する質問主意書とその政府答弁。国葬等について書かれた過去の論文とその参考文献。そして、過去の国葬儀と内閣・自民党合同葬の記録や新聞記事などにあたりました。

30分という持ち時間が決まったのは質問の前日でしたが、何を会議録に残すのかを考えて最終的に項目を決めました。

今回の国葬儀決定に至るプロセス、手続の在り方、国民の納得感、国会の関与の在り方。国会の議決を経た既定予算の範囲内で今回の国葬儀に対応することの意味。憲法に基づく臨時会召集要求に応える内閣の義務。国葬儀等に関して法律上の位置付けを考える必要性。国葬儀と内閣・自民党合同葬の違い。公文書管理法に基づき記録を残す必要性など。

最終的には、以下のような項目で30分の質疑を行いました。

[質疑項目(故安倍晋三国葬儀について)]

1.国民と国会に対する説明の必要性
2.国葬儀とする根拠と理由
3.法律上の位置付けを考える必要性
4.国葬儀である必要性
5.公文書等記録の在り方

以下、もう少し細かい内容について紹介します。

1.国民と国会に対する説明の必要性

〇7月14日に記者会見した表明した時点で国会に諮る考えはあったか否か
〇9月27日を国葬儀とすることを決めたのはいつで、その場はどこか。→7月22日閣議決定
〇記者会見から閣議決定までの約1週間の間に何を検討したのか。
〇上皇陛下の退位の際、内閣総理大臣から国会の意見を聞いたプロセスはご存知か。

今回の国葬儀は、事前に国民の代表機関たる国会の意思を聴取せず、国会の議決を経たわけでもありません。主権在民の現行憲法下における中心的機関たる国会が国葬儀に参画していないことを示していることになります。

よって、形式的には国葬儀であっても、実質的には国葬儀なのか甚だ疑問です。国民に寄り添って、その意見をいかに吸い上げていくかが重要です。せめて、国の儀式として、国会の意見を聴取したうえで内閣が最終判断をするという姿勢が必要だったのではないかと指摘しました。

2.国葬儀とする根拠と理由

〇国葬儀議論の場の在り方と憲法第53条に基づく臨時会召集要求の扱い。
〇予備費約2.5億円以外の費用は全て成立した一般会計予算(既定予算)からの支出なのか。接遇費6億円程度、警備費8億程度も既定予算からの支出になるのか。

〇既定予算で全て扱うとするのであれば、接遇費6億円程度、警備費8億円程度は冗費(無駄な予算)ではないか。冗費でないなら、既定予算で扱うはずの施策を圧迫してしまうのではないか。

〇吉田元総理の国葬儀、その他元総理の葬儀の警備費について、それぞれ示されたい。
〇安倍元総理の事件に伴い「警備の検証・見直しに関する報告書」を警察庁が国家公安委員会に提出しており、これを踏まえると警備費は十分なのかという見方もできるが見解如何。

議院運営委員会は本来、本件の質疑の場ではありません。そのことについて、議院運営委員会理事会の場で議論があったことや臨時会召集要求が提出されれば、内閣には召集する義務があることなどについて見解を質すとともに、経費の在り方について総理に問いました。

予備費の支出は8月26日の閣議で約2.5億円の支出を決定し、我々野党からの強い要請で9月6日に警備費と接遇費を含めた経費について約14.1億円とする資料が出てきました。

予備費以外の支出をすべて既定予算からの支出とすることの確認を行うとともに、そうであれば既定予算のうち、約14.1億円が冗費、無駄な予算ということになりかねません。仮に冗費でないとすれば、その分、既定予算を圧迫することとなり、既定予算で賄うことにしていた経費の施策の質・量が低下するおそれがあるためです。

既定予算は国会の議決を経た予算です。国会に説明したことと違うことに使うのであれば、また施策の質・量を低下させないためにも、補正予算で対応し、国会の議決を経て国葬儀を行おうとする姿勢を示すのが内閣のあるべき姿ではないでしょうか。

3.法律上の位置付けを考える必要性

〇国葬儀は組織規範は存在するが、根拠規範も規制規範もない。今後、国葬儀の法的上の位置づけを考えるつもりはあるか見解如何。

今回、法的根拠がないこと、閣議決定だけで決めたということ等が混乱を加速させています。

どの行政組織にどの行政事務を所管させるかを規程する規範を「組織規範」と呼ぶとすると、国葬儀については内閣府設置法が「組織規範」に該当します。また、「組織規範」による所掌とされた行政事務を執行する際に拠りどころとなるものを「根拠規範」、所掌とされた行政事務の執行を適正ならしめるものを「規制規範」と呼ぶとすると、国葬儀においては組織規範しかなく、根拠規範も組織規範もありません。

これだけ大きな問題となった以上、今後の国葬儀に関する法律上の位置付けというものを考えるべきではないか(あくまで考えるつもりはあるか)と総理の見解を問いました。

なお、法解釈論について、この箇所ではない私の発言の一部だけが切り取られて記事になっていました。切り取られた箇所より、その直後の発言こそがポイントだっただけに残念でなりませんが、せっかくですので詳細についてそのうち書きたいと思います。

(後日加筆:国葬儀について質疑に立った立場から書きました。
国葬議における法解釈と検証のあり方-その1国葬儀における法解釈と検証のあり方-その2国葬儀における法解釈と検証のあり方-その3

4.国葬儀である必要性

〇国葬儀と内閣・自民党合同葬の件数を示されたい。 →国葬儀1件、内閣・自民党合同葬8件
〇国葬儀と内閣・自民党合同葬の違いは何か。
〇国葬儀と内閣・自民党合同葬の外形上の違いは費用負担のみで間違いないか。
〇内閣・自民党合同葬では不十分な理由は何か。

5.公文書等記録の在り方

〇今般の安倍元総理の国葬儀について、記録を残すのか。

公文書管理については、財務省の公文書改ざん問題が発覚する前からこだわって取り上げ続けた政策課題です。公文書が法に定めもあるとおり、国民共有の知的資源だからです。今回の国葬儀にあたり、7月14日から閣議決定の7月22日の空白の約1週間を含め、記録をしっかり残すのかどうかについて総理に問い、総理から曖昧な答弁でしたので、重ねて問うた結果、記録を残す旨官房長官から答弁が得られました。

今般、安倍元総理の国葬儀を執り行うに際し、国民ひとり一人に喪に服することを求めるものではないにしても、国の儀式として葬儀を執り行いたいと考えるのであれば、総理は内閣としてその思いについて、多くの国民の共感を呼び、広く理解を得るために、国民の代表機関である国会の意見を聞く、そういった過程を経るべきではなかったかと思います。

最終的に内閣が国葬儀を実施するという決定をするにあたり、国会の意見を聞かなかったがために説明が不十分ともなり、分断を生んでしまっているのではないでしょうか。国民と国会に向き合う政治の必要性を訴えて質疑を終えました。

最後に。

新型コロナウイルス感染症の際の緊急事態宣言に伴う国会報告でも、今回の国葬儀に関する質疑でも議院運営委員会がその場として使われてしまいましたが、本来の議院運営委員会の姿ではありません。これらについては、経験したことも踏まえ、何らか形にしておきたいと考えています。