吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

第171通常国会/災害対策特別委員会 議事録(2009年4月1日)

2009年4月1日

3. 北朝鮮事案に係るJアラート不使用の理由・矛盾点

○吉川沙織君

そこで、続いてお伺いをいたします。
この全国瞬時警報システム、Jアラートは、
緊急地震速報を伝達するという目的のみならず、
様々な緊急情報に対して地域住民の皆様に
情報を伝達する目的を持っています。昨日の
衆参の本会議で北朝鮮が長距離弾道ミサイルと
見られる人工衛星発射を自制するよう求める決議が
採択されたところでありますが、これに関連してお伺いをいたします。

3月28日の朝日新聞の報道によりますと、今回の
件ではJアラートの使用を想定した有事の際の国民保護に
当たらないとして使わないと報じられています。これは、
3月27日の安全保障会議、「北朝鮮飛翔体発射事案に関する
対応」に基づくものであると考えますが、Jアラートを使わないとは
書かれていないと思いますが、これについて御見解を内閣官房に
お伺いいたします。

○政府参考人(櫻井修一君)

お答えいたします。
Jアラートにつきましては、これは、弾道ミサイルが
発射された後に我が国の領土又は領海に落下すると
いう情報が得られまして、住民を直ちに避難させる必要が
あると認められまして、更に加えて、落下前に住民に
お知らせすることが可能な状況下である場合に使用する
ものでございます。

したがいまして、今回の飛翔体事案に関しましては、
諸般の状況にかんがみますと、Jアラートは情報伝達
手段としての使用が適当であるケースには当たらないものと
考えておりまして、エムネットという別の速報手段を使って
市町村、マスコミに対しまして情報を発信すると、そういう利用を
考えているところでございます。

○吉川沙織君

今の御答弁を伺って、消防庁としてはどのような見解をお持ちですか。
感想で結構でございます。

○政府参考人(幸田雅治君)

今内閣官房の櫻井審議官がお答えをいたしましたけれども、
Jアラートの使用をするかどうかという判断につきましては、
内閣官房の方で全体的な状況を踏まえて判断するというふうに
されているところでございますので、消防庁としてそのことについて、
直接それについてお答えするという立場にはございませんので、
御了解いただきたいと思います。

○吉川沙織君

答える立場にないとのことでしたが、この全国瞬時警報
システム、Jアラートに関しては、全国瞬時警報システム
業務規程というものがございます。

この中の第2章第3条13号に、18種類の場合の目的で
これを使うということが定められておりますが、この13号に
弾道ミサイル情報というものがございますが、これには
消防庁さん、当たらないんでしょうか。

○政府参考人(幸田雅治君)

弾道ミサイルが日本をねらって飛んでくるといったことを
想定して、それは項目を列挙しているものでございますので、
実際に現実にボタンを押してJアラートを作動させるかどうかと
いうことと直接その事案がどうかということとつながるわけでは
ございませんけれども、そういう意味では、今回の飛翔体事案と
いうことではなくて、弾道ミサイルが日本に向けて飛ぶという、
そういういわゆる国民保護事案を想定して
その項目は書いているということでございます。

○吉川沙織君

3月27日の日に、今日ここにいらっしゃる委員
各位に多分防衛省から配付物があったと思います。
この中に、弾道ミサイル等に関する破壊措置に関する命令
というものが防衛大臣から自衛隊法に基づいて発出されたと
いう、こういう文書がございます。
これとの整合性というのは取れるんでしょうか。

○政府参考人(櫻井修一君)

そこにあります自衛隊法第82条の2第3項の規定に
基づいておりますのは、弾道ミサイル等というふうに
言っておりますけれども、この等の中には宇宙からの
落下物等も含まれた概念でございまして、そもそもJアラート自体は
我が国に対して弾道ミサイルでねらってくるというときに
いち早く警報を流すという趣旨で整備しておりまして、
今回のケースの場合はそれには当たらないというふうに思っておるわけですし、

また今回はエムネットという別の手段を通じて
速報をしていきたいというふうに考えているところでございます。

○吉川沙織君

北朝鮮から、宇宙ロケットなのか、衛星なのか、それとも
弾道ミサイル等なのか分かりませんが、これが発射されて
日本に到達するまでの時間は約10分とされています。

今御答弁の中でもJアラートの使用に値しないとの見解で、
その代わりとして官邸が使用予定であるエムネットを使われる
という御答弁だったかと思います。

でも、このエムネットですが、Jアラートより性能は格段に劣ります。
と同時に、市町村に伝達されるまで10分程度掛かるということになります。

その後、更に10分掛かってそこから地域住民への伝達と
いうことになりますが、それでも市町村防災行政無線等が
整備されていなければその情報すら届かないということになります。
Jアラートと自動起動のための市町村防災行政無線があれば
平均して20秒で伝達できることを考えれば、整備されている市町村
だけでもエムネットと併用するなりなんなりで選択肢があるならば、
最も早い情報伝達手段を使うべきではないかと考えますが、いかがですか。

○政府参考人(櫻井修一君)

お答えいたします。
今回の飛翔体につきましては、最初から弾道ミサイルと
分かっていれば、どういう飛翔をしていつごろ届くかというのが
かなり早い段階で分かると思われるんですが、今回の場合は、
基本的には衛星打ち上げと言われておりますとおり、我が国を
ねらってきている場合じゃありませんので、我が国に万々が一
飛来する場合には、どの辺に落ちるというようなことが
確定的には判断付かない場合があるし、それが情報として
入ってこない場合もありますので、そういった観点から、ただいままで
申し上げた方法を取るということでやることにしています。

○吉川沙織君

今回の場合、万に一つであろうとも、それが何であろうが、
落下物の可能性が捨て切れないからPAC3を配備されているものと
理解をしております。それであるならば、落下物の種類が何であろうと、
極めて短時間での瞬時情報伝達と住民避難が必要となる使用に値する
ケースであると言えるのではないかと思います。

改めてお伺いいたします。
エムネットはもちろん使われるんでしょうが、エムネットと
Jアラートの併用等、でき得る限りの情報伝達手段を講じることが
政府としての役目だと思いますが、いかがでしょうか。

○政府参考人(櫻井修一君)

重ねてのお答えになりますけれども、今回の事象につきましては
諸般の状況を見ながら判断しておるわけでございまして、それは、
今回の場合はエムネットの方が適切な情報提供ができるものというふうに
考えているところであります。

○吉川沙織君

なぜエムネットの方が適切な利用手段なのか。
結局は、全国瞬時警報システム、Jアラートですね、これに関しても、
そしてそれを流すための市町村防災行政無線も整備率が低くて
使い物にならないから、だから住民に不安をあおりたくないからもう
使わないことにしたんではないかと私自身は感じております。

実際に各自治体で報じられている報道内容を見れば、
Jアラートを整備している自治体に関しては、Jアラートや
エムネット、あとファクスを含む複数の手段を使って情報伝達の
訓練をしている状況にあります。

また、一方、昨日の新聞によりますと、整備されていないから
今回はJアラートを使用しないという報道もありました。

最後に、もうこれ以上お伺いしてもなかなか
らちが明かないでしょうから、これだけ申し上げておきます。

3月19日の予算委員会で、佐藤議員の質問に対して、
河村官房長官はこのように答弁されておられます。

「いずれにいたしましても、今御指摘ありましたように、
委員の御指摘も踏まえながら、国民の皆さんに無用な不安を
抱かさせてはならないとも思っておりますわけでありまして、
国民生活の安全を守るという観点から、事前に得られた情報の
内容等において、個々の状況も踏まえて、今のJアラート等の問題も
ございます。このきちっとした仕組みを、うまく機能を使って万全の対応を
取っていきたいと、このように考えております。」、こう答弁されております。

内閣官房長官の答弁はやはり重く受け止めるべきであり、
国民の安全を守るために、使うのであれば整備を積極的に進めて、
いざというときに、今回のような事案で使わなければなりませんし、
このような事態にエムネットとかほかの手段で代用する、まあ整備が
整っていないところに関しては理解をいたしますが、このような事態に
使わないのが前提になるようであれば整備をやめるべきではないかと
私自身は強く問題意識を持っておりますので、このことだけ申し上げて、
次の質問に移りたいと思います。