吉川さおり 参議院議員(全国比例)

国会質疑録

災害対策特別委員会 議事録(2011年11月4日)

2011年11月4日

○吉川沙織君

さて、避難勧告と避難指示に関しては災害
対策基本法第60条第1項に定められており、
法的根拠があると言えます。

一方、自主避難又は避難準備情報については、
法令上の根拠規定を見出すことができないものの、
平成23年2月3日に総務省消防庁が示しました
「避難勧告等に係る具体的な発令基準の策定状況
調査結果」において、避難準備情報とは、一般住民に
対して避難準備を呼びかけるとともに、早めの
タイミングで避難行動を開始することを求めるもの
とされています。

しかしながら、一般的に避難勧告と避難指示の違い、
さらには自主避難について、住民の側に立てば、
その違いを認識しづらい状況があるのではないかと
推察されます。そこで、それぞれの認知度について
調査結果、あるかどうかお伺いします。

○国務大臣(平野達男君)

済みません。最後の問いがちょっと
分からないです。それぞれの、ごめんなさい。

○吉川沙織君

避難勧告や避難指示、それから自主避難って
3つあるんですけれども、その違いがどの程度
国民の皆さんが知っているかどうか、調査結果が
あるかどうかお伺いします。

○国務大臣(平野達男君)

調査結果があるかどうかという御質問に関しましては、
そういう調査はしていないということでございます。

○吉川沙織君

これは多分、避難勧告も避難指示、今でこそ台風
12号や東日本大震災が発生をして、ある程度理解は
進んでいるかもしれませんが、それぞれがどう違うのか、
どんなふうに違うのか、分かりづらいと思います。

実際、平成22年2月25日に内閣府は「「避難に
関する特別世論調査」の概要」というものを公表して
います。この中の調査項目に避難行動を開始する
タイミングというものがあります。

この回答欄としては、避難勧告が発令されたときや
避難指示が発令されたときで皆さん回答されておら
れるんですが、この調査票、実はよく読んでみますと、
避難準備情報、避難勧告、避難指示の定義のみならず、
これらをよく読んでもらってから回答してくださいと
書いてあるものですから、仮に定義についての説明
がなかったら、この世論調査も回答がちゃんと出て
こなかったんじゃないかと思いますので、是非理解が
進むよう取組を進めていただければと思っています。

ただ、自治体によっては、避難マニュアルの中に自主
避難、避難勧告、避難指示の流れについて説明があり、
これらの違いをあらかじめ理解し、自らの判断で早めに
避難等の対応をすることが自分の身を守ることにつながる
としています。

しかしながら、今大臣からも御答弁ありましたけれども、
一般的にこれらが十分に理解されているとは言い難い
のが実情だと思います。避難勧告、避難指示等の意味が
十分に浸透していないことから避難行動に移さない方が
多いこと、さらには、災害心理の観点からも避難行動に
移さない方がいることも今般の東日本大震災において
改めて着目すべき点ではないかと思います。

中央防災会議が9月28日に示した「東北地方
太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する
専門調査会報告」の中で、「あらかじめ避難指示等の
趣旨について、住民等の理解を深める必要がある。」と
避難指示等の趣旨の理解についての記述はあるものの、
心理的な側面からのアプローチは残念ながらござい
ませんでした。

我々人間は災害に対して非常に鈍感であって、
一方では災害に対する経験や知識の欠如から、
もう一方では自分は大丈夫だろうと考える正常性
バイアスから災害を軽く見てしまう傾向が強く、
したがって避難行動も遅れがちになるという事実を
直視し、今後、計画を見直す際に災害心理を念頭に
置いて見直すべきと考えますが、大臣の御見解を
お伺いいたします。

○国務大臣(平野達男君)

今委員の御指摘の中に正常化バイアスという
言葉がございましたけれども、これは本当に
重要な概念だというふうに思っています。

一方で、こういった正常性バイアスの災害心理を
乗り越える、乗り越えるというか体制としてやはり
日ごろからの要するに避難訓練というものをどういう
ふうにやっているかということが一つの大きな鍵に
なるのではないかというふうに思います。

今、我々の方も、いろんなこれから、これまでも
調査をやってきましたけれども、避難をやっていた
地域というのはどうして避難したのか、あるいは
避難が遅れたところはどうして避難が遅れたのか、
こういったことに関してはしっかり詰めながら、
その差を縮めるような、その違いを解消するような、
そういう努力はしっかりやっていかなくちゃならない
というふうに考えております。

○吉川沙織君

今、正常性バイアスを考える必要性、避難
訓練の重要性ありましたけれども、今後の
計画を見直す際にそういったことも入れて
いただけますでしょうか。

○国務大臣(平野達男君)

そういったことというのは、
その心理状況ということですね。

この心理状況ということについても
重要な要素だというふうに考えております。

○吉川沙織君

今御答弁の中で、日ごろからの避難訓練が
重要だとありました。避難勧告等が適切に
発令され、日常から非日常へと正常性
バイアスから放たれた住民の方々が避難
行動に移す際に重要になることは、どこに
避難するか、どう避難するかが重要な
ポイントになると思います。

避難訓練の重要性については論をまたないと
考えますが、大臣の御見解をお伺いします。

○国務大臣(平野達男君)

避難訓練の重要性ということにつきましては、
これは、地域としてあるいは学校として安全な
ところに避難できたという背景の中には、通常の
防災教育あるいは避難訓練等々があったという
ことは、これはかなりの事例で見れることであります。

しかし、その一方で、避難したんだけれども、
東日本大震災の場合には、ここに避難していれば
大丈夫だと思って避難したにもかかわらず、そこに
高い波が押し寄せて、そこに避難していた方が
波にのみ込まれたという例もございます。

そういった避難の重要性と併せて、全体のその
想定の在り方ということとセットでいろんなことを
考えていかなくちゃならないというふうに思っております。

○吉川沙織君

総務省消防庁は、先月11日の地域防災計画
における地震・津波対策の充実・強化に関する
検討会において、岩手、宮城、福島を除く
海岸線を有する市区町村及び津波被害が
想定される団体に対して、東日本大震災を
踏まえた地域防災計画の見直しに関する
アンケートの調査結果を公表しています。

アンケートの内容は多岐にわたるんですが、
住民が参加する津波避難訓練を実施している
かに関しての結果を見ると、実施していない
団体が51%に上ってしまっています。

先ほど大臣からも答弁ありましたけれども、
東日本大震災では避難訓練を実施している
地域の方は迅速に避難ができたという事例
もあることですから、訓練の実施有無が避難
行動に影響を与えることは言うまでもないと
思います。

これを実施していない団体が多いということに
ついて、この原因を大臣はどう考えますか。

○国務大臣(平野達男君)

今回の津波によって人々がどういう行動を取ったのか。

特に、私は、避難をされたということの事例を調べる
というのも大事ですけれども、なぜ2万人近い方々が
亡くなって、行方不明になっておられるのかということの
方も重要だというふうに思っています。

なぜ避難訓練をされていなかったのかということに
つきましてはもう重要な検証の項目になると思いますが、
私の今までの現地を歩いている感覚の中では、
何といっても過去の体験というのが一つあります。

例えば、福島県の相馬地方ではこれまで津波と
いうものを体験したということがないということで
ありまして、津波警報がされている中で、ここなら
大丈夫だというよりも、そこに避難をするというよりも、
津波が来るかどうかを見に行っていた方々がいたと
いうようなことも聞いております。

しかし、そこが津波で洗われてしまったということに
ついては、原体験としてその津波というものの怖さと
いうものがなかなか伝わっていなかったということ
だろうと思います。私は、今回の東日本大震災で
津波を受けた方々は、これからしっかりとした防災
体制を組んでいただけるというふうに思っています。

問題は、そのほかの地域の中でどういう体制を
組んでいただけるか。そういった意味でも、東日本
大震災の教訓というものをしっかり整理しまして、
これを各地域につなげるということが大事だと
いうふうに思っております。

○吉川沙織君

今御答弁いただきましたけれども、実は、この
津波避難訓練を実施していない理由においても、
津波避難訓練を行う知識、ノウハウがないという
回答が最多になっていますし、小規模自治体では
兼務体制であるため防災業務に手が回らない
状況があるという自治体からの回答もありますので、
財政的な措置も含めて是非支援をしていただければ
と思います。

 

○吉川沙織君

これまで述べてきました避難勧告・指示等が
的確に発令され、避難行動に移していただく
ためには、情報が適切に伝わることが必要
不可欠です。最初に取り上げました内閣府の
調査によれば、避難勧告等の伝達方法で特に
効果的だった方法としては、防災行政無線が
最多を占めています。

先ほど指摘しました正常性バイアスから放たれ
避難行動に移していただくための重要な情報
伝達手段であることに相違ありませんが、今回
焦点を当てますのはその放送内容です。

東日本大震災においても、首長判断によって、
法律や行政上の用語ではないんですけれども、
命令口調で避難せよと放送を行って住民の避難を
適切に誘導した自治体の事例が報告されています。

この事例を参考に、今後、確実に避難行動に
移してもらうため、防災行政無線の放送内容の
在り方について検討すべき内容だと考えますが、
いかがでしょうか。

○国務大臣(平野達男君)

避難指示、避難勧告はタイミングが重要だと
いうことでありますし、それと併せて効果的に
伝達されることが大切だということだというふうに
思います。

住民の心に響くことが迅速な避難行動に
結び付くというふうに理解をしております。

国におきましては、従来から「避難勧告等の判断・
伝達マニュアル作成ガイドライン」を作成いたしまして、
伝達すべき項目を例示して示すとともに、伝達例文や
ひな形をあらかじめ用意するように促してきたところで
あります。

一方で、効果的な伝達方法につきましては、今
委員からも御指摘がございましたけれども、地域で
様々な工夫がされておりまして、例えば今年9月に
豪雨災害に見舞われた奄美地方では、被災地の
区長が命令口調で避難を呼びかけたということが
ございまして、それが効果を発揮したというような
例も承知しております。

そうした事例も踏まえまして、住民の避難行動に
効果的に結び付くような避難勧告等の伝達の
在り方については検討を進めてまいりまして、
徹底を図ってまいりたいというふうに思っております。

○吉川沙織君

避難勧告を適切に発令して情報をお伝えして
避難行動を起こしてもらうためには、情報の
伝達拠点ともなる行政庁舎等の防災拠点が
機能不全に陥ってはならないと思います。

今回の大震災、台風12号では残念ながら
このような事例もあったところですが、先ほど
引用しました総務省消防庁の検討会のアンケート
結果によれば、施設、庁舎の機能喪失等を想定した
代替施設等についてという質問項目があります。

市区町村については、地震、津波等による機能
喪失等を想定して代替施設、代替機能等について
定めている、29%、定めていない、69%となっています。

この調査を踏まえますと、代替施設、代替機能等に
ついて定めていない市区町村が約7割に上っています。

中央防災会議の9月28日の専門調査会報告に
おいても、「施設が被災した場合、その影響は
極めて甚大である」と指摘されていますが、国として
これまでどのような指導や助言を行ってきたのでしょうか。

○国務大臣(平野達男君)

今回のいろいろな、いずれ、様々の災害の教訓を
踏まえまして、そういった代替の施設の機能の在り方
等々についてもこれは検討していかなければならない
というふうに考えております。

○吉川沙織君

是非検討を進めていただければと思います。
もう少しお伺いしようと思ったんですが、避難に
関しては、避難のための十分な時間が確保
されなければ、かえって避難中に被災する
おそれがありますので、逆効果になってしまいます。

しかし、最近の災害発生、ゲリラ豪雨にしろその
ほかの災害にしろ、住民が必要にして十分な
情報を事前に入手して適切に分析するというのは
困難であります。

だからこそ、今まで申し上げました避難勧告や
避難指示等が重要になりますが、住民側の
理解も必要不可欠となります。これまでの
各災害、特にチリ地震のときやなんかは
そうでしたけれども、避難率の低さが大変
問題になっていますが、予測にはやはり
限界があるということ、それから、避難勧告を
出したけれども大したことはなかったという
空振りがあるということも国として理解を求めて
いく必要があるとともに、国民の生命、身体を守るため
でき得る限りの方策を取る必要があることを申し上げて、
私の質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。